大石内蔵助が、その息子、主税に、伝授する「実践的プロジェクトマネジメントの極意」
【ステークホルダー特定 その5(ステークホルダー登録簿を作る)】の①
<ステークホルダーを特定/分析を行うために、ステークホルダーに関する、数々の情報を集めた主税は、早速ステークホルダー登録簿を作成することにした>
主税: 父上、江戸の堀部弥兵衛さまのご協力もあり、概ねステークホルダーの情報は集まりましたが、これらの情報を、ステークホルダー登録簿に、どのように登録したら良いものでしょうか。
また、登録するために、どのような項目に分類・記述したら良いかも、わかりませぬ。
内蔵助:うむ! ステークホルダーも多岐にわたるので、ただ単に、すべての情報をもとに、登録する項目を選んでいては、項目数が多くなりすぎて、使い勝手も悪い。それに、第一大変な時間を要することになる。
先ずは、先に分類した項目を基準に、主だったメンバーから記録してはどうだろうか。そして、それ以外のステークホルダーは「プロジェクト憲章」に照らし合わせて、その登録の必要性を見ていくことにしたらどうじゃ。
主税: 畏まりました。
そうですね、そうすれば、登録簿作成も、さほど時間を要せずに、終えることができるものと思います。
作成を終えましたら、直ちにご説明に上がります。
内蔵助:うむ! 頼むぞ、ちから。
ただ、登録に漏れたメンバー情報を記録した資料も、分類していつでも確認できるように頼むぞ、あとで必要になるかもしれぬからな。
<こうして、主税は「ステークホルダー登録簿」の完成を急いだ>
【ステークホルダー特定 その5】の ① おわり
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【ステークホルダー特定 その5】の ②
主税: 父上! 登録簿の更新を終えました。
先ず、その登録項目から説明させて頂きます。
判りやすくするために、項目を、大きく3つにグルーピング致しました。
1つ目は、ステークホルダーの「識別情報」でございます。
この情報には以下の項目が含まれていますが、簡単に言いますと、「どこの」「誰か」そして「どのような地位の方か」という情報でございます。
例えば、徳川綱吉さまの場合
氏名 :徳川綱吉
組織での職位 :江戸幕府第5代将軍
所在地 :江戸城
役割 :日本国の治世の最上位責任者
連絡先情報 :直接の連絡不可・・・xxxさまを通じて、
と、このようになります。
【ステークホルダー特定 その5】の ② おわり
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【ステークホルダー特定 その5】の ③
内蔵助:うむ、して、2番目のグルーピングはどのようなものじゃ?
主税: はい! 「評価情報」でございます。
この情報は、このステークホルダーに対して、プロジェクトが主に、どのようなことを要求しており、あるいは何を期待しているのか、という情報であり、また、プロジェクトに及ぼす可能性のある影響、ライフサイクルの中で利害関係が最大となるフェーズ、などを登録しております。
内蔵助:なるほど、大変意味のある情報だ。この情報を見ながらマネジメントの優先順位を決めるわけじゃな。
主税: その通りにございます。
例えば、広島浅野本家でございます。
40万石の、大大名のステークホルダーではございますけれど、赤穂浅野家のご本家とはいえ、この江戸幕府の盤石の体制の中では、いち外様大名である赤穂浅野家のお取りつぶし程度のことがらに対して、異議を唱えることは出来ないものと存じます。
従い、プロジェクトとしては期待したいところでございますが、プロジェクトへの影響も少ないことから管理の優先順位は「低」となります。
【ステークホルダー特定 その5】の ③ おわり
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【ステークホルダー特定 その5】の ④
主税:最後に「ステークホルダー分類」でございます。これは、我がプロジェクトに対して、いうなれば「敵か」、「味方か」の分類でございます。
登録簿上は、「支持」、「中立」、「抵抗」などとして、分類いたします。
内蔵助:なるほど、そうすると、例えば、討ち入りに必要な武器調達先である、「天野屋利兵衛」がどのように分類しておるか興味深いが、如何なっておる?
どうしても協力を仰がなければならない、重要なステークホルダーの一人である。
主税: はい、 現時点では「中立」と分類致しております。
やはり、討ち入りを成功させるには、その武器を、極秘にしかも、確実に調達する必要があるものと存じます。
従って、天野屋さま」には「支持」頂けるような働きかけが、必要かと考えております。
内蔵助:そうじゃな、主税。
天野屋さまには、確実にかつ、極秘のうちに「支持」してもらえるよう、綿密な計画によるアプローチが必要じゃ。
天野屋さまから、我々の企てが幕府に漏れてしまったら、全てが水の泡じゃからな。
戦略を立て、戦術を練って進めることに致そう。
このようなことも、登録簿の「備考欄」に記載しておいてくれ。
主税: 畏まりました。
【ステークホルダー特定 その5】の ④ おわり
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【ステークホルダー特定 その5】の ⑤
内蔵助:あっ! それと主税。
今後、ステークホルダーマネジメント計画を立て、エンゲージメントを進めていくことになるが、その際重要となるのが、ステークホルダーの特性情報じゃ。
すなわち、個人であれば、ソーシャルスタイル。
その個人の思考が開放的かそうでないか、また、感情の開放度も把握しておく必要がある。
つまり、こちらの想いを伝え、理解してもらうためには、少なくとも話を聞いてもらわなければならない。そのためには、相手のソーシャルスタイルに合わせたアプローチが有効と考えている。
また、組織、グループであれば、その文化であり、おかれた環境もまた重要となる。
既に集めた情報もあろうが、念のために、これらの情報も集め、登録簿に記載しておいてくれ。
もちろん、先ずは優先順位の高い主だったステークホルダーだけでよい。
宜しく頼むぞ。
【ステークホルダー特定 その5】 おわり
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