大石内蔵助がむすこ、主税に、伝授する「実践的プロジェクトマネジメントの極意」
【ステークホルダー・マネジメント計画 その3 (計画書作成にあたって「ツールと技法」を活用する)】の①
<インプットの情報を全て確認し、内蔵助に説明し終えた主税は、計画書の作成に取り掛かった>
主税: (ひとりごと)
たしか、このプロセスの留意点は「プロジェクトのライフサイクルを通して、適切なマネジメント戦略を策定する」 だったな。
そして、だれを(Who)、なぜ(Why)、どの段階で(When)、誰が(Whom)、どのようにして(How)、エンゲージメントするのか、どこで(Where)、そしてそのためにはどの程度の資金(How Much)が必要か決める必要があるんだな。
うむ! 「だれを」、「なぜ」、「どの段階で」は既に登録簿を完成させた時点で明らかになっているから良いとして、「誰が」、「どのようにして」については、難しいなあ。
今度も、チームメンバーの主だった方々のご意見、アドバイスを戴くことに致そう。
それに、その方法によっては、準備しなければならない資金が変わってくる。
だいいちその費用を見積もるのも、経験と知識が豊富な方々でなければならない。
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【ステークホルダー・マネジメント計画 その3】の②
主税: 父上! 計画書を作成するにあたって、藩の他のご家老の方々及び要職の方々のお力添えを頂きとう存じます。
お父上からその旨、ご指示を出して頂けないでしょうか?
内蔵助:うむ! 良いが、どうしてじゃ?
主税: はい、 計画書を作成するのももちろん私は初めてでございますが、実行可能な計画書を作るには、どうしても先を見通す力が必要となってきます。
しかしながら、わたくし、十分な経験も知識も持ち合わせていません。
これまで、作成した資料をもとに作る分にはいささかの不安もございませぬが、エンゲージメントを行う方はどなたが適役で、どのような手法を使うのが最適かというところが今一つ、自信をもって言えないのでございます。
当然、その費用がどの程度かかるのかのお見積もりもはなはだ怪しいところでございます。
内蔵助:なるほど、 さもありなん。
判った。 各要職のご家老たちにお願いをしておこう。
個別にヒアリングが出来た段階で、一度会議を開催し、主だったメンバーの意見を聞くことに致そう。
当然、主だったメンバーにはそれぞれ役割の中で計画の実行、すなわちステークホルダーのエンゲージメントをお願いしなければならない。
その役割の抜け漏れ、そして実行者の理解と納得感を得た中での計画でなくては、実行もおぼつかないからのう。
計画書の案が出来たら、皆に説明する前に、一度わしに説明してくれぬか。
よろしく頼む。
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【ステークホルダー・マネジメント計画 その3】の③
<主税は、計画書の案を作成するために、ステークホルダーの現在の関与度および計画された関与度の比較表を作成し、その比較表の使い方に間違いがないか、内蔵助に確認することにした>
主税: 父上! 「ステークホルダー関与度評価マトリックス」を作成してみました。この評価マトリックスの使い方が間違っていないか、見て頂けないでしょうか。
間違った使い方のまま特定されたステークホルダー全員の分を作ってしまっては、時間と労力の無駄となります故、宜しくお願いしたいと思います。それに、間違った資料で、主だった方々のご意見を伺うのは大変失礼となります故。
内蔵助:そうじゃのぉ主税、 良いアプローチ方法じゃ。
プロジェクトの進め方もだいぶ慣れてきたようじゃのぉ。
して、今はどのように考えておる? 説明してくれ。
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【ステークホルダー・マネジメント計画 その3】の④
主税: はい。 先ず、ライフサイクル毎に主要なステークホルダー一覧を作成致します。
そして、その次に、以下5つの分類項目を右側に配置し、それぞれ現在の状況(C:現在)、望まれる状況(D:望ましい)を記入します。
「不認識」、「抵抗」、「中立」、「支持」、「指導」
例えば、
先の武器商人の天野屋さまの場合、
現在の関与度(C)は「中立」
望ましい関与度(D)は「支持」
と記入するのでございます。
そして、「中立」をだれが、どのようにして「支持」にエンゲージメントするのか、主だった方々の意見を聞いて、「ステークホルダー登録簿」に記録
するのでございます。
内蔵助:なるほど、 うむ、使い方はよさそうであるな。
して、1ステークホルダーに対して1行ということであるか?
主税: はい、そのように考えております。
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【ステークホルダー・マネジメント計画 その3】の⑤
内蔵助:それでは、もし、天野屋さまが「不認識」の場合は如何いたす?
「不認識」から、いきなり「支持」するようなエンゲージメントが必要となるが、そう簡単に行かぬであろうのう。
このプロジェクトの前提であり、最大の問題は、このプロジェクトは、江戸幕府の法に照らせば、「違法」だということなのじゃよ。
もちろん、この違法プロジェクトに関わったすべてのステークホルダーに塁はおよぶ。
実際関わっていなくても、疑われるだけでも、幕府の厳しい取り調べにあうことになる。
したがって、そう簡単に我々に協力してくれるとは考えにくい。
たとえ、協力頂けるとしても、表向き誰にも悟られぬよう。段階的にエンゲージメントする必要がある。
わしは先ず、我々のプロジェクトへの協力可否を伺う前に、天野屋さまのお人柄、取り巻くご環境など十分調査した上で、先の刃傷事件へのお考えなど探り出す必要があると考えておる。
どうじゃ主税、そのような計画が策定できるよう1ステークホルダーに対して、その段階でのエンゲージメント計画が表現できるようにしてみてはどうかのう。
主税: はい、 さようでございますね。
エンゲージメントは、その段階ごとのステークホルダー間の相互の関わり合いも重要ですが、それぞれのステークホルダーの関与度、関心度はたまた権力の移り変わりも見ていくことが重要なのでございますね。
それでは、そのように資料を工夫いたします。
【ステークホルダー・マネジメント計画 その3】 おわり
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