大石内蔵助がその息子主税（ちから）に伝授する「実践的プロジェクトマネジメントの極意」
エンゲージメント事例①（江戸会議）
旧赤穂藩家臣の間では、城明け渡し以来、お家再興を進める「上方漸進派」と、討入り推進の「江戸急進派」との対立が続いていた。
主税： 父上！ また、安兵衛から手紙が届いております！
なぜ、ご城代は早く討入りを、ご決断なされないのか！
との、催促でございます。
内蔵助：そうか。。。
主税： 父上がすぐにでもご決断なさらなければ、江戸に残っている浪士たちが単独で討入りをするやも知れませぬ。
内蔵助：それは困った。。。
今動けば、お家再興の願いがダメになってしまうぞ。
そうなると、お家再興を願っている浪士たちが黙っちゃおるまい。
吉良を討つ前に仲間割れしてしまっては我々本来の目的を果たせない。
何としても、この対立を解消しなければ。。。
主税： 父上、何故安兵衛たちは、父上のご決断に反して、討入りを急いでいるのでございますか！？
内蔵助：うむ！
良い質問じゃ。 それはのう主税、
赤穂にいる我々は浅野家の家来として代々仕えてきているが、江戸詰めの浪士たちは浅野家というよりはむしろ、内匠頭さま一人に仕えていたからじゃ。彼らは内匠頭さまの無念を晴らしたい一心なのだ。
それに、江戸市民の厳しい目もある。
なぜ赤穂浪士は、主君の仇討ちをしないのか、喧嘩両成敗の法によらぬ「不公平な裁き」を受けながら、何も行動を起こさぬとは、それでも武士（さむらい）か！！と、裏に表に噂されているからじゃ。
皆辛いのであろう。だがしかし、いま暫く辛抱してもらわなければ。。。
主税： 父上、先に安兵衛たちを説得に行ったはずの者から討入りの催促が来ています。
これで２度目でございます。これでは、何度説得の使者を送っても同じこと。何か良い策はございませぬか。
内蔵助：うむ！
それでは、わしが出向いて説得することにしよう。
皆にこの内蔵助のもくろみ（戦略）を説明し、その狙いを理解・納得してもらうことにいたそう。
人を説得するには誠心誠意ことに当たらなければならない。
＜■江戸会議：元禄１４年１１月２日＞
内蔵助：皆のもの、お集まり頂き大義である。
さて、かねてより、殿のご無念を晴らすべく、皆で誓いを立てた討入りのことであるが、今は、内匠頭さま弟、大学さまをもって、お家再興をお願いしているところである。
皆の無念さと悔しい思いは、重々承知しておるが、急いてはことを仕損じてしまう。
内匠頭さまの１周忌までには、必ず結論を出すので、どうかいま暫くご辛抱願いたい。
安兵衛どの、貴殿もお判りの通り、この目論みは失敗を許されない。
その時期を待つのじゃ、よろしくお願いする。
安兵衛他「江戸急進派」の面々は、十分納得したわけでは無かったが、殿の１周忌まで、結論を待つことにした。
おわり
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