大石内蔵助がむすこ、主税に、伝授する「実践的プロジェクトマネジメントの極意」
【ステークホルダー・エンゲージメント事例②（神文返し）】の①
主税： 父上！ 江戸から書状が届きました。
大学様が広島浅野本家に預かりの身になったとの、知らせにございます。
内蔵助：何！ まことか！ それでは、お家再興が、叶わなくなったか！！
主税！ すぐに皆のものを集めてくれ！
＜■円山会議：元禄１５年７月２８日＞
内蔵助：かねてより、お上にお家再興のお願いをしていたのだが、この７月１８日をもって、大学様が閉門の身となった。
このことは、お家再興の道が、閉ざされたことを意味する。
かくなる上は、かねてより計画していた、吉良邸へ討入りを実行することにする！
内蔵助：皆ご承知の通り、この目論みを行うことは容易ではない。
それに、たとえ首尾よく討入りを成功させたとしても、我々は死罪を免れないものである。
皆の者、覚悟を決め、決意を新たにお願いしたい。
よろしく、お頼み申し上げる。
会議参加浪士の中には、 驚きを隠せないもの、 決意をあらたにするもさまざまであった。
暫くののち。。。
【ステークホルダー・エンゲージメント事例②（神文返し）】の②
＜脱盟者急増＞
主税： 父上！
脱盟を願い出るものが、日を追うごとに増えております。
このままでは、同盟者が、いなくなるやもしれませぬ！
内蔵助：うむ！ そうなのだ。 もとより、「お家再興」を願い、後で同盟に加わった浪士の脱盟は、致し方ないものと考えていた。
だがしかし、赤穂藩の上位役職を務めていた者までもが、次々と脱盟している。
これまで赤穂藩を一緒に盛り立て、これより生死を共にすべき同志と確信していただけに、甚だ残念なことである。
主税： 父上！ それでは、同盟継続を命令すればよいではありませぬか！
皆赤穂のさむらいですぞ！！
内蔵助：うむ！ その通りだが、今はその時ではない。
これから、討入りまでの準備に時間を要する。その間、数々の辛苦に耐えなければならない。
その覚悟が無ければ、この目論みはやり通すことは出来ないのだ。
覚悟の無いものが参加したら、危機に直面した時に逃げだすやもしれぬ。
そのような浪士は、邪魔になるどころか、かえって危険である。
それに、先にも申したように、この目論みは、たとえ成功したとしても、死罪は免れないものじゃ、「切腹」か、「打ち首」かの違いだけじゃ。
だから、たとえ、わしにその権限があったとしても、そのような命令は出来るわけがない。
本人の意思こそが、大事なのだ。
【ステークホルダー・エンゲージメント事例②（神文返し）】の③
主税： 難しいものでございます。。。
いったいご覚悟が出来ている方々が、どれほどいらっしゃるのでございましょう。
まだ、脱盟を願い出ていない方々の中にも、お迷いになられている方も、いらっしゃるのでしょうか。
内蔵助：うむ！いるやもしれぬなあ。
致し方ない。かくなる上は、皆の覚悟のほどを確かめよう。
主税： どのようにでございますか。
「あなたは、ご覚悟がございますか？」と聞いたら、たとえその覚悟が無くても、さむらいである以上、「ない！」とは言えないのではありませぬか。
内蔵助：その通りじゃ、主税。
その方法では、本当に覚悟が出来ている同志を見つけ出すのは、難しいであろうのう。
どうじゃ主税、それでは、皆に誓約書を返し、「討入り」が取りやめになったと、嘘の決定を伝え、反応を見ることにしようではないか。
内蔵助：うむ！
それでは、主だったメンバーを使い、皆に「誓約書返し（神文返し)」を行ってくれ！
果たして何名の同志が残るものか。。。
半数程度に減るやもしれぬが、その時はこれまで以上に、少人数で討入りを成功させる策を、練らなければならないであろう。
この「誓約書返し」にて、半数以下の５５名となってしまいました。
おわり
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