大石内蔵助がその息子主税(ちから)に伝授する「実践的プロジェクトマネジメントの極意」
【ステークホルダー特定 その3(分析技法を使ってステークホルダー分析を行う)】の①
<主税は、ステークホルダーを特定するために、プロジェクトに関係する方々をリストアップしました。>
内蔵助: 主税もすでに判っていると思うが、我々のプロジェクトには十分な資金もなければ、期間的な余裕もない。
したがって、必要最低限の労力と資金でプロジェクトを進める必要がある。
これから、プロジェクト・マネジャーであるわたしの仕事は主に、プロジェクトを成功に導くために、いろいろな方々とコミュニケーションを行うことである。だが、わたしの時間も限られている。だから、できるだけ効果の高いコミュニケーションに限って進めていきたいと考えている。
ゆえに、リストアップしたステークホルダーの方々のうち、誰と主に、コミュニケーションを取る必要があるのか、明らかにしてもらいたいのじゃ。
よろしく頼むぞ、ちから!
主税: 判りました。お任せください。
先に父上に教わったPMBOKガイドに記載されている分析技法を使って進めてまいりたいと、考えております。
【ステークホルダー特定 その3】の①おわり
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【ステークホルダー特定 その3】の②
主税:先ず、ステークホルダー分析技法について再確認してみよう。
◆どのような技法であるか
・定量的情報及び定性的情報を系統的に収集分析する
・プロジェクト期間を通して誰の関心を考慮すべきかを決める
◆どのようなことが判るのか
・ステークホルダーの関心ごと、期待および影響力は何か
・ステークホルダー間の関係(連携、協力関係構築の容易性)
・プロジェクト、フェーズのさまざまな段階における関係に影響を与える情報
【ステークホルダー特定 その3】の②おわり
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【ステークホルダー特定 その3】の③
◆どのような手順で進めれば良いのか
①すべての潜在的なプロジェクト・ステークホルダーおよび関連情報を特定する
・先ず主要なステークホルダー
・次にその他のステークホルダー
②各ステークホルダーからの潜在的影響や支援の内容を分析し分類する(優先順位付けをするため)
③主要なステークホルダーが、さまざまな状況にどのように反応し対処する可能性があるのかどうかを評価するということだった。
なるほど、ステークホルダー分析とは、そのマネジメントの優先順位づけを行うための技法だな。
ということは、その分類が重要となる。その分類方法を間違えば、正しい優先順位が明らかにならない。
【ステークホルダー特定 その3】の③おわり
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【ステークホルダー特定 その3】の④
主税: 父上! ステークホルダー分析でやることと手順は判りましたが、その分類方法が判りませぬ。
PMBOKガイドにはいくつかの分類モデルが紹介されていますが、どのように使ったら良いのでしょうか。
内蔵助:主税! ガイドにはどのような分類モデルが紹介されておる?
主税: ハイ、以下4つのモデルが紹介されております。
・権力と関心度のグリッド
・権力と関与度のグリッド
・関与度と影響度のグリッド
・突出モデル
内蔵助:うむ!
「グリッド」というのはわかるかな?
これは、日本語では「格子」と呼ばれているものじゃ。
この分類モデルでは、それぞれ2つの要素を縦、横にとり、その位置づけ、すなわちステークホルダーの位置づけを明らかにし易くするために使われる。
この図のことを一般に「グリッド図」と呼んでいる。
例えば、「権力と関心度のグリッド」モデルを例にすると、このモデルはプロジェクトに成果に対する分類ということになる。
すなわち、討ち入りの結果をどのように裁くかという観点でみる必要がある。
【ステークホルダー特定 その3】の④おわり
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【ステークホルダー特定 その3】の⑤
主税:将軍綱吉さまは「権力」「関心度」共に高いと評価されるので、グリッド図の右上に位置することになる。
この場合、「注意深くマネジメント」する対象となることがわかる。
最終的に、将軍さまには我々が期待する裁きをしてもらわなければならないのだから、当然といえば当然。一番優先順位が高いということになる。
主税: なるほど、 判りやすいですね。
そうすると、幕閣の方々は、「権力」の部分が、綱吉さまより、下の方に位置するということでございますね。
「関心」についてもやや左方向(低)となりますと、グリッド図全体でいうと綱吉さまより左方に位置すればよいという事になります。
民衆の方々は、権力は「低」、関心は「高」となりますので、常に情報を与えるということになります。
でも、我々のプロジェクトは極秘に進める必要がありますので、ほんとうのプロジェクトの情報を伝えることはできません。
どうしたら良いのでしょうか。
内蔵助:うむ、そこがこのプロジェクトの難しいところじゃ。
このところは、特に難しいので、別の機会を設けて説明することに致そう。
主税: 判りました。 それでは、他のステークホルダーの分類を続けることにいたします。
<権力と関心度のグリッドによる分類を終えた主税は、次の権力と関与度のグリッドを用いた分類に取り掛かることにした>
【ステークホルダー特定 その3】の⑤おわり
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【ステークホルダー特定 その3】の ⑥
主税: 権力と、関与度に関してですが、プロジェクトを進めるうえで関与する方々の分類方法といえますね。
ということであれば、やはり、旧赤穂藩士の方々をまず分類する必要があります。
既に誓約書を提出している方々は、権限は「中」ぐらいでしょうか、関与度は「高」というように思います。
そして、大学さまは、権限は「高」、関与度は「低」ですね。大学さまこそ、先頭に立ってこのプロジェクトを指揮してもらいたいところです。
内蔵助:うむ、通常のプロジェクトであればその通りだが、本プロジェクトは極秘に進める必要がある。幕府の法に照らせば違法プロジェクトじゃ。
それに、大学さまのお人柄からして、とうてい無理な話じゃ。
さて、関与度と影響度のグリッドによる分類はどのような状況じゃ? 戦略を立てる上で最も重要な分類である。
主税: ハイ、先ほど分類を開始しましたが、やはりこれは、チーム・メンバーそして武器調達先、江戸での打ち合わせ場所を確保してくださる方々が含まれるように思います。
それに、吉良さま屋敷の絵図面の入手、お茶会などの日程入手先も含まれましょう。
内蔵助:うむ! しっかり分類してくれ。
【ステークホルダー特定 その3】の ⑥おわり
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【ステークホルダー特定 その3】の ⑦
内蔵助:最後の「突出モデル」の分類を終えたらすぐさまわたしに説明してくれ。
わたしはこれからひと眠りする。年をとったら、どうも夜更かしは身体にこたえる。
主税: 畏まりましてござりまする。夜が明けるまでには全ての分析を終えて父上にご報告させて頂きたくお約束申しあげます。
内蔵助:ちから! 我が息子ながら頼もしいのぉ。
よろしく頼むぞ!
【ステークホルダー特定 その3】 おわり
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